環境を選ぶ
品川から羽田へ向かう電車の中で、窓の外に目をやると、ふと古びた病院が見えた。(よく言えば“歴史がある”。でも正直、廃墟のようだった。)
なんとなく気になって、Googleで検索した。
口コミには「看護師さんがナイーブで…」「トイレが壊れたまま…」そんな言葉が並んでいた。病院のサイトを開くと、そこは「精神病棟」だった。
思わず、隣にいた夫につぶやいた。「こんなボロボロの病院で、心って回復するのかな?」夫は少し考えてから、こう言った。「3〜4ヶ月もいれば、そこにいる人たちはそれが普通になるんだと思うよ。」
私はがん治療を受けるとき、
環境にはとことんこだわった。
最初に紹介されたのは、新大久保近くの大きな病院。行くまでの道のりは外人が多く居住する道を抜ける必要があり、ゴミも多く、異国のような臭いで気が沈んでいく感じがした。診察室に入ると、先生が体に悪そうな飲み物を片手にしていて(なぜ?)院内の空気もどこか重かった。ロビーの近くにあるトイレは2つのうち1つが和式で、「ここに通い続けるのは違うな」と直感的に思った。だから私は、セカンドオピニオンを申し出た。(本当はただ、病院を変えたかっただけだけど。)
次に紹介された病院は、知人が「モナちゃん、それなら絶対ここがいいよ」と教えてくれた場所だった。行ってみると、まるで世界が変わったように明るかった。広い窓から光が差し込み、1階にはタリーズがあって、少し歩けば芝生のある公園がある。周りはビルばかりなのに、不思議と“気”がいい。
私はその病院で手術と治療を受けることに決めた。個室ではないけれど、窓のある部屋で1日1万円。個室だと3万円だったけれど、迷いはなかった。違和感を信じて、自分で選んだ環境を正解にしたい。そう思った。おかげで今、私は元気に生きている。もし心が弱っている人が、あの電車から見た病院に通うのだとしたら、私はこう言いたい。
そこに行くよりも、海を眺めに行ったり、山で深呼吸したり、公園を歩いたり、映画を観たり、本を読んだり。気持ちいい風を浴びて、サウナに入って、そうやって五感を使う方が、きっと心は元気になる。健康って、きっとそういうことなんだと思う。それができないから病気なのかもしれないけど・・・。
そして、もうひとつ大事なこと。人は、弱っているとき、追い込まれているとき、調子が悪いとき、“適切”を選べなくなっているということを知っておいた方がいい。
そういう時こそ、
「どんな場所にいると自分は落ち着くか」を思い出してほしい。焦って決めなくてもいい。いま選ぶ場所や人が、自分の心を少しでも柔らかくできるかそれだけでいい。「何も選ばない」という人も、実は“選ばない”ということを選んでいる。
だからこそ、いま自分がどんな環境を選んで生きているのか、一度、静かに感じてみてください。